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大和心

第96回 桃と神話-1

著者:小山一夫 / 公開日:2022-06-22

掲載準備版・未公開。公開日は元ブログの投稿日です。

古来、桃は神聖な果実として世界各地で重宝されてきました。

桃の原産地は中国西北部だと言われ、凡そ2500年前から栽培されてきたといいます。そしてシルクロードを辿って中近東へと広まり、2000年前にはギリシャやローマにまで伝えられました。つまりイエス・キリストの生きた時代には、東洋から西洋に至る広大な地域で食されていたことになります。

孔子(BC552-479年)が編集したという「詩経」の中にも桃についての記載があり、かなり昔から桃が栽培されていたのがわかります。さらに桃は西王母(中国における天地の創造神)伝説においても重要な役割を持ち、後年「西遊記」にも聖なる果実として登場しています。古来、桃の木は仙木、果実は仙果と呼ばれ、魔除けや祓い、そして不老長寿の力を秘めていると考えられてきたのです。

日本でも古事記において、イザナギノミコトが黄泉国から逃げ帰る時に、黄泉比良坂(よもつひらさか)で追手に対し桃の実を投げて退散させています。これは穢れや邪を祓ったという意味になりますが、その後ミコトは桃の実に「葦原中国(あしはらのなかつくに)にいるもの達が苦しんでいる時に彼らを助けよ」と告げ、意富加牟豆美命(おほかむづみのみこと)と號う名を与えました。

つまり桃は、罪穢れを祓うことによって人々に苦しみからの解放をもたらす働きを持ち、その働きは神が与えたものであることを明示しているのです。これが神事に桃を供える根拠の一つになっているのでしょうが、一部に古代中国の影響が窺えます。