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大和心

第145回 太一生水と水素

著者:小山一夫 / 公開日:2022-10-05

掲載準備版・未公開。公開日は元ブログの投稿日です。

「太一生水」という文献をご存知でしょうか。

1993年に発掘された郭店楚墓竹簡(郭店楚簡)に書かれていたものです。

墓葬年代は、墓葬形態や出土器物から推測して、戦国中期BC四世紀中葉から三世紀初頭だとされています。

道家といえば「老子」(道徳経)が代表的な文献として知られていますが「老子」以外にも、この「太一生水」や「恆先」(1994年発見)という異なった宇宙観、存在論があった事が近年明らかになりました。詳細は諸々の発掘記録や研究論文を参照ください。

ところで、この「太一生水」では「水」に大変重要な役割を持たせています。

「太一水を生ず。

水反りて太一を輔(たす)け、是を以て天を成す。

天反りて太一を輔け、是を以て地を成す。

天地復た相補け、是を以て神明を成す。

神明復た相補け、是を以て陰陽を成す。

陰陽復た相補け、是を以て四時を成す。

四時復た相補け、是を以て滄熱(そうねつ)を成す。

滄熱復た相補け、是を以て湿燥を成す。

湿燥復た相補け、歳を成して止(や)む。」

「太一は水に蔵み、時に行りて、周くして或り。

生ずるを以て、万物の母と為る」

太一とは古代中国における宇宙の根元を表す哲学的概念ですが、直接的に生成に関わるのは、水・天・地まで。その後は連鎖的に生成されます。

他書で「水」についてどのようなことが言われているのか、その一部をご紹介しますと、、

知者楽水(論語)

上善如水(老子)

優游涵泳(論語)

明鏡止水(荘子)

水滴穿石(漢書)

水髄方円(筍子)

行雲流水(宋史)

等々多々ありますが、宇宙生成の最初の段階で「水」に着目したのは、中国の文献では、この「太一生水」がはじめてでしょう。

ところで、原子番号1の元素は水素ですが、これは宇宙で最も豊富にある元素であり、質量では宇宙全体の55% 、総量数では全原子の90%以上を占めていると言われています。

さらにエネルギー源としても宇宙活動それ自体に大変深い関係があります。

水素の性質や働きの広範さを知れば知るほど、「太一生水」の著者の慧眼に感心するばかりです。