こういう次第で、「今だ一人である。私と一緒に天下を治める者は、思うに、いるだろうか」と仰せられた。その時、神しい光が海を照らし、忽然と浮んで来る者があった。そして、「もし私がいなかったら、あなたはどうしてうまくこの国を平定できたであろうか。私がいたからこそ、あなたは国を平定するという偉大な功績を立てることができたのだ」と言われた。そこで大己貴神は問うて、「ならばあなたはいったい誰だ」と仰せられた。答えて、「私はあなたの幸魂・奇魂である」と言われた。大己貴神は、「確かにそのとおりだ。あなたは私の幸魂・奇魂であることがすぐに分った。今どこに住みたいと思うか」と仰せられた。答えて、「私は日本国の三諸山に住みたいと思う」と言われた。そこでその神の宮殿を三諸山に造営し、そこに住まわせた。これが大三輪の神である(中略)。』(小学館日本書紀)
「夫葦原中国、本自荒芒、至及磐石草木咸能強暴。然、吾已摧伏、莫不和順。」(「日本書紀」)とあるように、葦原中国を平定するに際して、神は荒魂と和魂の活動(はたらき)を用いられた。その為、平定後には幸魂と奇魂を主として必要とされたわけだ。神には一霊四魂が備わっているが、一魂のみを分魂されることはない。四魂の働きに強弱をつけられるものと解する。