本書の読み方
本文は、昭和二十年の問いから始まり、幕末へさかのぼって、再び終戦の決断に戻る構成とした。すでに教育勅語について読まれた方には重なる説明もあるが、本書だけでも議論をたどれるよう、必要な背景は省略しなかった。
本文中の『新論』の「第38」などの番号は、巻末に再録した既存対訳原稿の区分である。会沢の原著の章番号ではない。原著の主要な構成は、国体、形勢、虜情、守禦、長計である。巻末原稿が扱う範囲を、原著全体の全文と取り違えないようにしたい。
引用箇所に添えた「私の読解」は、本文の議論に必要な意味を示したものである。巻末の現代語訳を改訂したものではない。巻末原稿は、原文と現代語訳、末尾の思想的要約を含め、文言と順序を保持して収録した。そこで「原文」と表示されている文章には訓読・書き下しの形が含まれ、漢文原本の影印ではない。
歴史的な法令や詔勅は、その時代の語彙のまま示す場合がある。「臣民」「夷狄」などの語も、現在の価値判断として用いるものではない。引用は引用として読み、そのうえで私自身の評価を述べる。
本文の〔資料番号〕は、巻末の出典案内に対応する。個人の日記、制度を定めた文書、後年の回想、文学作品は、それぞれ性質の違う史料である。同じ重さの証言として扱わず、何を知るための資料なのかを明らかにする。