原文
日本紀も、古事記も、皇室の歷史である。神武天皇の御先祖は、天に出でたのであるといふ歷史である。そこで、神武天皇の靈時を鳥見山に立てゝ、皇祖天神を祀り、以て大孝を申ぶとしてあるは、則孝の場である。そこで、天皇樣は、孝あって忠なしと言はんが如きものである。臣民は、忠を重もに說きて孝に持ち込めば、孝の中で、一番の孝は、君に忠を盡くすことである。人臣は斯う說く。そこで、社會の安寧を保つのみならず、常に君を君として行けば、國家の登逹は出來るものである。
現代語訳
『日本紀』も『古事記』も皇室の歴史であり、神武天皇の祖先は天に由来するという歴史である。神武天皇が鳥見山に祭場を設け、皇祖である天神を祭って、大きな孝を申し述べたとあるのは、孝の実践である。そこから、天皇には孝があって忠はない、というようにもいえる。臣民には忠を中心に説き、それを孝へ結び付ければ、孝の中でも最も大きな孝は、君に忠を尽くすことである。臣下にはこう説く。そうすれば、社会の安寧を保つだけでなく、常に君を君として尊ぶことによって、国家の発展も実現できる。