2024-09-01 著者:小山一夫
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ヘッセの場合は、
「思想として解脱を書くことは、すでに二十年もインド思想を研究していたヘッセにとって、さして困難ではなかったであろう。しかし、ヘッセにとっては、作品中に述べられているように、思想やことばは重要ではなかった。救われる体験の秘密が問題であった。その宗教的体験の告白をここにシッダールタという具体的人物に託して象徴的に書こうとしたのである。それは容易なことではなかった。『そのとき、もちろん、初めてではなかったが、いつもよりもきびしく、自分が生活しなかったことを書くのは無意味だという経験をした。』と彼は表白している。彼はあらためて、禁欲、瑜伽(ゆが)の業にいそしんだ。」(「シッダールタ」新潮社。あとがきより)ということで、かなりストイックなアプローチでしたが、R・バックは残念ながら、そこまでではありませんでした。ですから、瞑想の教科書レベルともいえる「シッダールタ」のような素晴らしさは、「かもめのジョナサン」には期待しない方がいいでしょう。
「無限なんですね、ジョナサン。そうでしょう?彼は思った。そして微笑した。完全なるものへの彼の歩みは、すでにはじまっていたのだった。」(「かもめのジョナサン」新潮社)