一般財団法人 野萩青少年育成財団

天才脳 空海の秘密

先行公開・2026年10月11日

第2回 第1章 虚空蔵求聞持法とは何か

第1章 虚空蔵求聞持法とは何か

虚空蔵菩薩は、虚空のように限りない智慧と慈悲を持つ菩薩とされている。「求聞持」とは、聞いたことを忘れず、心の中に保持するという意味である。

現代のように、経典を印刷する技術も、コピー機も、コンピューターもなかった時代、膨大な経典を学び、記憶し、それぞれの関係を理解するには、私たちには想像できないほどの記憶力と集中力が必要だった。

虚空蔵求聞持法は、一般には虚空蔵菩薩の真言を一日一万遍、百日間唱え、合計百万遍に達する修法として知られている。

しかし、求聞持法は、真言だけを機械的に百万回繰り返せばよいというものではない。印を組み、一定の作法に従い、観想を行いながら、百日間にわたって修法を続ける。

一日一万遍を百日間続けるには、信仰心や意志の力だけでは足りない。長時間姿勢を保つ身体、呼吸を乱さない力、一定のリズムを維持する力、雑念が起きても修法へ戻る力、単調さに耐える力、翌日再び行へ向かう回復力が必要である。

求聞持法の厳しさは、一時的に深い集中状態へ入ることだけにはない。一定の質の集中を、何時間も、何日も、百日間にわたって維持し続けることにある。

求聞持法が空海に与えたものは、記憶力という一つの能力ではなく、散在する知識を一つへ結びつける統合力だったのではないだろうか。

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