そして現行の『素問』の伝承では、唐代の王冰の仕事を忘れることができない。王冰は八世紀に『素問』を整理し、注を加えた。さらに宋代にも校訂が行われた。私たちが現在読む『黄帝内経』は、古代の医学思想だけでなく、それを後世へ伝えようとした多くの人々の編集と校訂の上に成り立っている。
4 『素問』には何が書かれているのか
現在、『黄帝内経』は大きく『素問』と『霊枢』の二部から成るものとして扱われる。それぞれ八十一篇から成り、両者を合わせて中国医学の基礎理論と臨床思想の大きな骨格を形づくっている。
『素問』では、陰陽五行、臓腑、気血、病因、診断、治療原則、季節と人体との関係、養生などが幅広く論じられる。病気になった部分だけを見るのではなく、人間を自然界の変化の中に置き、身体全体の調和を考える視点が非常に強い。
本書の後半で問題にする「生命力」や「養生」を考えるうえでも、『素問』は重要である。たとえば冒頭の「上古天真論」は、病気を治療する技術から始まるのではなく、人がどのように生き、老い、生命を養うのかという問題から始まる。これは『黄帝内経』が単なる治療技術書ではなく、治療医学と養生医学の双方を含むことを象徴している。
また、病気を一つの原因、一つの臓器だけで説明するのではなく、陰陽、寒熱、虚実、臓腑、気血、外界との関係などを重ねて考える。この全体を見る発想が、後世の「証」という考え方へつながっていく。