前書き
本書は、「気功でガンは治せるのか」という問いを、肯定するためでも否定するためでもなく、資料に基づいて検討することを目的とする。中国には、導引、吐納、静坐、行気など、現在「気功」と総称される身体技法の長い歴史がある。古典には、病気の改善や養生に関する記述が少なくない。近現代には、ガン患者のための気功として郭林新気功療法が広まり、スワイショウも「百病皆治」と呼ばれるほど強い期待を集めた時期があった。こうした歴史を前にすれば、「本当に治療効果があったのか」という疑問を避けることはできない。
しかし、古典に「治った」と書かれていることと、現代医学の基準で治療効果が証明されていることは同じではない。症状が軽快したこと、病変そのものが消失したこと、標準治療の結果として改善したこと、自然経過によって変化したことを区別する必要がある。そこで本書では、気功の由来をたどる「探源」、効果が生じる仕組みを分解する「探原」、そして何ができ、何ができないのかを明らかにする「探限」という三つの視点を用いる。
中心的に扱うのは郭林新気功療法とスワイショウである。両者には、病人が自ら身体を動かし、呼吸や注意を整え、日常生活の中で継続できるという共通点がある。一方、その成立過程も呼吸法も身体操作も異なる。この差を無視して「気功一般」の効果を論じることはできない。さらに、身体運動、呼吸、鬆、注意制御、屋外環境、集団性、継続、期待、自己効力感など、実際の介入を構成する要素を分けて考える必要がある。