この書はインドの哲学者シャンカラ(AD 700-750)の教説書です。
「ウパデーシャ・サハースリー」とは、千の詩節からなる教説の意で様々な古典を引き合いに出しながら、シャンカラ自身の説を述べています。
頷ける所と、首を傾げる所と入り混じった内容ですがヨーガの真実を考察する際に、いろいろな意味で参考になることは間違いないと思います。
「人は、光に照らされている身体を、誤って発光体である、と見做すように見者(=アートマン)であるかのように現れている心(=統覚機能)を『私である』『見者である』と考える。」(岩波文庫 前田専学 訳)
古の聖者や賢者の言行録&著作などには、往々にして本人以外の人々による言葉が混入してしまうものですがこのウパデーシャ・サハースリーはシャンカラ関係では「確実に真作と考えられる唯一のもの」
だといわれている文献です。
ですからシャンカラの思想を知る上で欠かせない資料であることは疑いがありません。
このウパデーシャ・サハースリーに限らずウパニシャッドにしても、ヨーガスートラにしてもそこに書かれている内容全てを盲目的に受け入れるというのは前々号で、クリシュナムルティや道元の言葉を引用したように私的には、とても賛成できません。
たとえばスッタニパータにしても第1~3章には首を傾げるところがしばしば見受けられます。
中村先生によれば、第4~5章は時代的に最古層とのことですが原始仏典といえども、多くの詩句の中には後世に付加されたと想われる所も少なくないようですウパニシャッドなども、複数の人達の手によるものが殆どなのですから思想的な一貫性がないのも当たり前だと思います。
いずれにしましても盲信や盲従は好ましいことではないということです。