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「炬」おしゃべり 聲を聞く-1

著者:若月佑孔 / 元ブログ投稿日:2023-10-14

 

「一寸待って‼︎お母様は黙っていて下さい。さっきから お嬢さんの聲を聞たいと思って質問すると、すぐお母様が返事して終ふ。お嬢さんの聲がききたいんですから、お嬢さんに返事させて下さい。」と云ふことがよくある。

聲といふものは 心の音なんだ。悲しみもよろこびもすぐ聲に現はれる。

昔の人の言葉に、「喜びの席に悲しみの聲あり、悲しみの席によろこびの聲あり」と。

人間なんてこんなものなのだと云ふ意なのだが、本当に人情をよく示している。

茶碗を、お皿を買いに行つたとき、チーンとはじいてみるでせふ。大工さんがノコギリを買ふ時にも チーン、チーンと爪ではじいて音をきいて居るのを見たことがある。その音で茶碗の出来不出来が判るんです。ヒビのある茶碗と完全なのとやってごらんなさい。音で差別が付くから。

駅で何と云ふ役なのか、車両整備係と云ふのでせふか、長い柄の小さな頭のカナヅチを持つて車体の下の、車の軸の上の箱をコツコツ叩いて回っている人も居ます。

人間も音を出すんです。お話を聞くより、その聲を聞いていると、此の人は 情の厚い人、薄い人、今悲しんでいるか、よろこんでいるか、悲しみの言葉を使ひ乍らも内心は楽しんで居る等が判ります。

 

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