俺はこんな遊蕩児だったのだろふか、反省した事もあるが、金を使って青櫻に登った事もないし、酒盃を口にして、夜を明かしたこともない。折にふれて聞く小唄の味に溺れ込む、揚句に、その妓を好きになって終ふ。
絲の音をきくだけで、武士がくつわの音に勇む様に㐂しくなるんだから妙だ、考へてみると、俺の幼い頃、親父は軍人だが相当呑ん兵衛で、呑みに出る時は、母親が幼い俺を付けてやったとか、それで芸者の出る席に慣れると同時に、綺麗な髪、綺麗なオベベの者は、皆芸者だと思って居たらしい。仙台から、新潟の叔母の家にいった時、初対面の叔母様に向って、開口一番、ヤイ芸者!!それからは中学を終る頃まで、叔母に仇をとられた、
小唄のお師匠さんがあそびに来た、芸者さんだったのを、すすめて、お師匠さんにした。「僕はお師匠さんが好きだったのさ」とヤブから棒に云ったら、パッと赤くなって、下をむいて、「私、一晩考へてみます」ときた。旨い!!流石は洗練された女性だ!!”いやよ”とはすぐ言はない。「一晩考へてみます」いいね。「此の話はこれでストップ!!」と笑って終った。
