大体、芸者さんと云うものは、旦那を持つ、二号としての教育を躾けられてゐる様なものさ。
待合に行く、料亭に行く、一ぱい飲むと、オシッコに行く、必ず若い妓がトイレの中まで付いて来るね、オチョウヅ、白い腕を二の腕までまくって、水杓を取って、当方の手に水をかけてくれる。それから、もつれ乍ら肩で押すやうにして、座敷へかへる。三度が三度だ、それで俺が云った。「ションベン位いほっとけよ、一々付いて来るな!!」ところが斯うなんだ、必ず從いてくる様にされて居るので、若し若い妓が不精して、客に從って立たないと、老妓にひどく叱られる。じや、何故從いてくる。
「殿方はね、どんなにお飲みになって、陽気に愉快に騒いでいらしても、お手洗の中では、奥様とお子様の事を思ひ出してゐらっしゃるものなんです。帰ろう!!とフッと思はれるのは此の時なんです、放っとくと、そのまま玄関へ出て帰って終はれるんです。決して、奥様とお子様のことは忘れてゐらっしやらないんですね、だから、付いて行くんです。これも商賣のコツなんです」とさ。
