このコツを俺から聞いて実行して居る人がある。工具会社の社長さんだ。親御様の代から懇意にして居る家の息子さんだ。
苦しくなる、仕事に行き詰ったな!と思うとすぐ山の温泉に行く、ボンヤリと山を眺めて二三日、河原で石を拾ってあそぶ、「ハッと、こんな時、気がつくんです、よしと、すぐ帰って来て、その考へ通りバタバタとやって終ふんです、これが一番よいですね」と言う。
これだ、腹の中からの、自分の聲をきいて、ウン、ソウカでよいのだ。金玉線香だ。俺はいつも言う、「俺は俺は鼻で呼吸して居るんだ」これなんだ。人の鼻で生きてるんじやあるまい!!そんな生活はよせよ、俺は俺だ。俺の考へ方で生きるんだ。此処は、どこまでも「獨り」だ、人に相談して生きて居る!!そんな奴は死んでしまへよ。
戰後隨分無茶な商賣をしたことがある、闇屋だ、北海道や三陸地方から、奥や魚油を貨車で買って来て賣りとばしたことがある、隨分もうかったね。
でも、素人だ。思ひ付きでやったことだ。取引の定石なんか知らないから、「やってみろ!!」が資本だ。
兄貴達や親類が心配して、「マッチヤン、こうなったらどうする?」と、いろいろウルサイ。俺は言うのさ、
「俺はこうならないと困るんだ!!」でこうなるべくたてた予算に強引にひぎづつて、その状態になるやうに押し廻した。結好、思ったやうになったね。勿論兄貴にも相談なんかするもんか、そうして、兄貴達の心配した「こうなったら」は絶対なかった。
