水商賣、小料理屋、バー確かに「酒」を賣るだけさ、然しその裏に媚があり、男と女とのナアナアが無かったら、あの商賣は繁昌しっこなし。
おかみが色っぽくて、女中がすぐころびそうで魚心水心てなツーと云へばカーと行かなければ誰があんな処で呑むものか、助平共を相手にしたいと言うんだ!!此のイロ婆メ!!
「何か別な商賣をしたいと思ひます」芸者さんや、小料理屋のおかみが相談に来る、きまって小物屋、雑貨店、装身具店等と云う、キャバレー、バーをやりたい等と云うのは、まだ、よろめき社会の苦しさを知らない中途はんぱの女だ。
「女には皆、パンパンになる素質がある、その立場に入れて終へばすぐ慣れるよ」と言った男は水野南北と同じに女に苦労したチヂイであった。だが男も本来浮気なものさ。
男も始終よろめきたがって居るものさ。奥さんは、家で夫としての男ばかりしか見てゐないから、外で男になって居る時を知らないから、家の夫は道心堅固であると思っていらっしやる。
實に夫となると、どんな男でも、「家庭は大切」であると知ってゐるし、誰でも其の奌は小心翼々たる「夫」である、奥様の前では猫の前のネヅミの如き夫もあるさ。
その夫を見慣れて、他の旦那様達が男になってゐるのを見て、「何んてだらしのない人でせう」と云はれるがどっこい、貴女の旦那様も夫としては良い人でしやうが、外に出て居るときは男です。
よろめき度のさ、「家に有るものは買いなさんなネ」と云ったって、いろいろあるものネ、「買はなきや良いんでしやう。買はなきや」
だって、綺麗にして、水っぽくて、觸れば落ちん露の風情のもあるから、男になりたくもなる。
「男性って皆そうなんですかッ」とこの俺にくってかかった女性がある、余りインテリで理屈っぽくて、利口そうで、それで振られ通した三十娘さ。
「そうです、男って皆そうなんだ。夫としてのものと、男としては違うんです」と返事した。
