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「片片草」 ラジオ眼鏡-1

著者:若月佑孔 / 元ブログ投稿日:2025-06-20

 

或る会社の社長さんが面白いメガネを持って来ました。サンマーグラスと云うんでせう。ガラスは黒、二本のつると云うのか、足と云うのかが太い、大きな眼鏡です。ロイドメガネだね。


その足の中にラジオが仕込んであって、耳につっこむレシーバが二寸程の紐でぶらさがってゐる。このメガネをかけて、レシーバを耳の穴につっこんできく、アンテナはガラスの上の方に付けてゐました。


友達が持って来たはなしです。新発賣品だそうです、今まで、外国の輸出して居たので、今度は内地へ賣り出すそうで、私もこの仕事は面白いと思う、どうでせうか」なんです。効能書ですか、説明書、カタログと云うんですか、外国美人がメガネをかけて、の寫眞、ヨコ文字ばかり、判りやしない。


私は、その機械のちいさなのに驚ろいたし、こんなものが兵隊に一つづつ與えられて、命令をきいたら、戰爭するのに便利だろと思ひました。


それより面白いと思ったのは、此の社長さん(悪口、コメンナサイ)常に自分の意思でなく、他人の言葉に動かされては、始終迷って、私に相談に来る、その度に、いろいろ私に相談してはいけない、自分の考えをしっかと捕まえてゐなさい、自分のこゑを自分できいて、自分の行動をしなさい。とウルサク云うと、自分のこゑは仲々出来ないものですね、と嘆息してゐるとても善良の方です、自分の判断は自分でする、人に相談したって駄目だ、自分を本当に知ってゐるのは此の自分だけなのだから、自分が自分に向って、自問自答してこそ、本当の現在への方策で出て来る。苦しんで居乍ら、ハッと気が付く方針は自分の心の中で、自分にささやく聲なんです。「自分のこゑをききなさい」と云うのはその事なんです。


この、自分の聲、自分らしい判断を持つことこそ、他人の言葉に迷はされない、本当の自分を作り出して、自分らしく生きる第一の基本なのです。


今、これが出来ないと嘆く人が頭にくっつけて聞くものを持って来ました。皮肉ですね。
 

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