春です、よいお天気です。昔のお釋迦様の居られた頃の印度です。
雪山が大きな水晶の峯になって美しく陽に照り輝いて、桓河の流れも神々が住んでゐた昔と同じ様に南へ南へと帶の様に流れてゐます。
兩岸の常盤木もいつのまにか新らしい葉に変ってゐるし、火焔樹の花が火の渦の様に見えます。
雲雀が啼き乍ら、雲と高さを競って居るし山麓の村では仔と別れた母牛がやるせなく啼くのが聞えます。
御釋迦様のお弟子で神通力第一の目犍連尊者が其の頃、スッと中空に飛び上って、下界と眺めて居りました。仲間の舎利弗尊者も阿難尊者も、みな托鉢行に出て居るのです、目犍連もその托鉢組の一人なのですが、独りだけ中空に昇って、”さてこれから”と考えてゐたところです。
何處かで良い功德を積ませたいと思って、じっと下界を見つめて居ると、アッタアッタ、今お城の丘の石垣の上で汚らしい乞食のお婆あさんが死にかかって居るのが見えました。目犍連はすっと、鷲のやうに其処に降って行きました。目犍連は神通第一ですから、この枯木にボロを巻き付けた様なお婆さんの「過去生」が見えるのです。
