「俺の家の規定とは、静かな時には、いろいろ世俗のこと、国事の事を談義して研究し合ふ、此の様な事の無い人物は、心が疎遠の者として、話し相手にならぬ奴として暇を出す。これが一つ、俺に仕へて外に行っては主人たる俺を褒め讃え、辯護し乍ら、家に居ては俺の行動を制肘しよし、悪るしを注意してくれない奴は情の通じない親しみない者として傍に居て貰ふ必要がないから暇を出す、これが二つ、その者が「俺は斯ふだ」と自負して居て、他の者と親しみ合ひ、協力しやうともせず、又、自分より「智者」を見ても慢どって、役にも立つまいと俺の処へ紹介もしない、連れても来ない。
本当の良い家臣と云うものは主人の為によい人物、智者を一生けんめい紹介して来るものである。これが出来ないのは、良い人物智者を紹介したら、自分への主人の鍾愛が失はれると思ふ嫉妬心からである、此の様なことが三である、今のお前は、此の三年間に、此の三つの中一つでも行ってゐるか、失敗しない様に勤めたのは只その俸給の為でしかない。それはお前自身の為にのみ働いてゐたのである、その程度の家臣なら沢山ある。無用の長物に俸給を與へる必要がない、去れ!!」
