若月佑孔の記事一覧

「片片草」 『策略』創作だから架空の物語り-2

著者:若月佑孔 / 元ブログ投稿日:2025-07-21

 

誰か扉をあけて這入って来た。給士長兼料理長の葦白だ、「もういヽ年だな、白い髭が汚ならしくなって来た」武帝は見乍ら黙ってゐる。老人は持って来た茶を恭々しく卓の上に置いて黙然と立って居るのでその眼を見返すと、
「陛下は何を考へて居られますか」と聞く、
「ウンウン」武帝は笑ひ乍ら、茶碗を持って、
「国が大きくなると、仲々治めにくいものでな、豚も肥えては走れなくなると云うものさ」
何を思ったか葦白は床に跪坐すると、大きく胸を開くと、

「貴方の恐れてゐるのはその事ではない、一人の人物でせう」
「ナニ!!」武帝は剱を抜くと、さっと胸に差し向けた。


「さあ、刺しなさいませ、王のこころを知り、御なやみを知る者は、私一人でございます。韓秦の韓非子が申しました。王の秘密を知ったと云へば生きられぬものであると、それで斯く胸を拡げて、御剱を頂戴仕ります。が、王上、歌丘の戰ひは完全な我が軍の完全な勝利になるところでしたが、そして、敵將も最早や最後の時でありましたが、その時一人の勇士が現はれて、その危急を救うて、共に逃れました。その者は私の従弟なのであります、敵將はそれで私の従弟に非常に恩義を感じて居るのでございます。如何でございますか、私を使ひに仕立てなさいましては?」
 

元の記事