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「片片草」 自福-3

著者:若月佑孔 / 元ブログ投稿日:2025-09-10

 

貧窮したら、貧窮らしくなれとは、貧乏くさくなれ、不運に甘んじて意気地なしになれと云うことではない。


男はツブシが効かなくてはいけない。ツブシの効かない者は、此の会社をクビになったらどう仕様と、地位にしがみ付く、安定する為にオベンチやうも云う、毎日カバンにブラ下ってヤットヤット生きてる様な顔になる。これでは、女房も友達達も心細くなって終う、ツブシのきく奴は、何所でも、どんな時でも平然と、自分に自信を持って生きてゐる。今、これが失敗してもナアニ金魚売りでもやるさ、土方もやるさ、せんべいを燒いたって生きてゐられるさ、こんな男は、明るくほがらかに、大道坦々たる哉だ、一朝失敗しても今日は今日でニコニコスコップを持って土方仕事に専念する、俺は昨日まで斯うだったなどとグチらない。此の様に現在になり切って、ニコニコと一生懸命な男は、男一匹としての仕事をやり遂げる。

ところが、貧乏人心情の者は、グチグチが多い、ツブシのきかない奴ほど態裁をかざる、そのくせ、会社から帰ると、会社の猫が玄関から一生這入ると俄然虎になって威張り散らす、所謂『亭主ヅラ』と云う、子供なら『内辯慶、ソト味噌』で少し可愛らしいが、外でペコペコ家では亭主づらして威張る奴程小憎らしい奴はない。

こんなのに限って、会社や外で面白くない事があると、それを家の中まで持ち込んで、何も知らない女房に当る、罪のない子供にまでギヤンギヤン噛みつく。女房は心配するし、子供はオビエル、さあ、そうなると自分が怒鳴ったことの罪の苦しみに堪えられない苦しまぎれ、自分を大きく見せやうと、又吠える芝居だ、こんなケダモノみたいな奴、失敗すると、さあ表面を飾るね。俺は今まで斯うだったんだぞ、でなければグチグチグチだ。テメイが意気地なしで失敗したくせに、人の為だと恨む、そして、女房子供友人達が同情してくれないと悲觀する、コンな人間のクヅは沢山ゐるよ。
 

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