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「片片草」 龍-2

著者:若月佑孔 / 元ブログ投稿日:2025-09-13

 

龍頭觀音のときは、何枚も書いたが全部駄目だった。


黒雲の黒土の色が濃いと竜の顔を大きく書くと、觀音様が浮き上って輕るく見える。


大体まだ竜と友達になった事がないから、どう書いたら良いか判らん、浅草の天井の竜を書いた奴なんか、竜と友達なんだろ、そうでないと、ゴマカシの画だよ。何べんも書きなほした、竜の顔、角、頭、手、胴足尾、それから鱗と、丁寧に書いた。チットも怖くない斯う画いたんでは、竜もトカゲの親方みたいになっちやった。で、悟ったネ。


昔、支那に学者のバカが居た。此の大人、竜が好きで、紙も竜のスカシ、文鎭も竜、筆も竜、机の脚も竜、何でもカンでも竜の形や模様なんだ。


ある時、天上の竜がそれを聞いてうれしくなって、本物の俺が行って、「逢ってやったらさぞよろこぶだろう」てんで降りて来た、家を四まはり半もグルグル巻いて、玄関に顔を入れたら、学者先生ギヤツと気絶したげな。


学者先生の好きだったのはオモチヤの竜なんだよ。人間なんて、万事これと同じさ、物事の眞相を知ろうとしない。眞相を見ないで、仮定のもので安心しやう満足しやうとするもんだ。これを「疑竜の楽」とでも云うか?


大体、人間なんて、ウソで満足したがるものだ。ハッキリ判るのが怖いらしい。


自分じや胃ガンじやないかと、毎日クヨクヨして居て、漸く医者のところに行く、お医者も承知してゐるから、胃ガンではないと云う、そして、患者も疑り乍ら、ワザと安心して、胃ガンで死ぬのだ。
 

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